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問題

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レベル1

STEP6

古文

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問題

次の文章は、しのびね』の一節である。中納言は、で美しい姫君と恋に落ちる。しかし、中納言の父内大臣は時の権力者左大将の娘と中納言を結婚させた。その後、内大臣の圧力に耐えかねた姫君は姿を隠し、中納言は悲しみで物思いに沈んでいたが、ある時せめてもの気晴らしにと宮中に参上する。以下は、それに続く場面である。これを読んで、後の問いに答えよ。

せめての心やりどころに、ひきつくろひて、へまゐりたまへり。雪かきくれて降りければ、御遊びあるべきとて、中納言おはしますほどなりければ、御気色よくて、今日の空はいかが」とて、御覧ずれば、ありしにもあらずせ痩せとして、いとどなまめかしく、うちにほひたるまみ口つきなどを、御目とどめてまぼられ給ふ。これに少しもなれそめたらん女は、必ずしふはとまりなん」と、色めかしき御心におぼされて、外を少し御覧じだして、

人知れず恋を時雨の初雪は涙の雨に消えやわたらん

とうちずんじ給ひて、中納言の方を見おこさせ給へる御まじりの、ものはづかしげに少しうちゑませ給へば、我が思ふ心の中しるく見ゆるa」と、顔うち赤む心地して、聞きも知らぬやうにてさぶらひ給ふ。

御遊び果てて、人々はまかで給へbに、中納言の立ちとどまりて、ながめ歩き給ふに、(注1)しようきやう殿でんのあたりを、何となきやうにて聞き給へば、人のものいふ声の、忍び忍びに聞こゆれば、あやしくして、みかどの、このごろは、たがまゐるとも聞こえぬに、この御つぼねへ、しげくわたらせ給へる。(注2)更衣などの、御心にしみたるがさぶらひ給ふか」とおぼつかなくて、やをら立ち聞き給へば、上の御声にて、もの思ふなるは、苦しきものぞよ。この忍び音のつきせぬこそあまりいぶせきわざなれ。されど、(注3)まろをにくしと思ひ給ふもことわりぞ。思ひあはする人のたがはずは、げにいかばかりの人にか心をうつし給はん。見るままにあいきやうづき、うつくしきことのならびなきを、まろ女ならましかば、浄土の迎へなりとも、この人を見捨てて、離るべしとは覚えぬ様のしたるを、なほいかなりしことに、かくあくがれ給ふぞ。されど、片思ひはよしなきこと。まろは、さやうにものは思はせ奉るまじきを」と、つぶつぶとのたまはする御声の聞こゆれば、なほあやしのわざやと思ひて、ひまを求め給ふに、柱のそばに虫のくひたる穴のあれば、もしや見ゆるとのぞき給ふに、上のおはします奥の方に、紅梅の濃く薄くかさなりたるそでぐち、青きひとへ、赤きはかま、髪のすそのうちひろごりたるやうにて、ほのぼの見ゆる。

たれとはさだかに見えず、のたまひ続くる言の葉あやしきに胸うちさわぎて、なほたちのかでまぼり給へば、袖を顔におしあてて、忍びがたげに泣く様の、まがふべくもあらぬを見つけ給ふに、胸は音にも聞こえぬべくさわぎて、涙さへすすみ出づるを、なほひが目にやと、目をつけ見るに、顔に袖をおほひて、ひきもはなたcば、こはいかに、(注4)とふにつらさのまさるとかや、ことわりぞ」とて、袖をひきのけ給へば、泣き赤み給へる顔の、ただそれと見なすに、さらにいはんかたなくあさましくもうれしくも覚えて、しばし立ち給ふに、つゆなびき奉る気色もなし。

ややありて、上は帰らdおはします。ほのかに見ゆる面影の恋しければ、また立ちよりてのぞき給へば、ひれして、髪の行方も知らず、泣き給へる様の、やがてうち入りてもなぐさめまほしく思せども、人目つつましくて、光家といふ(注5)ずいじんに、御すずり召して、御(注6)たたうがみに、あさましきことはなかなか聞こえんかたなくて、

世にあらん心地こそせね行方なき月のをそこと見しより

と書きて、日の暮るるもおそくて、たそがれ時に立ちより給ひて、(注7)中納言の君とたづね給ふ。

注) 1承香殿 ── だいの後宮十二殿舎の一つ。内宴や歌舞などの遊びが行われた。 2更衣 ── 女官の呼び名。天皇の后妃のうち、女御の次に位置する女性。 3まろ ── 帝の自称代名詞。 4とふにつらさのまさる ── 吹く風もとふにつらさのまさるかな慰めかぬる秋の山里」続古今和歌集』巻十八雑中入道前右大臣)の一節。 5御随身 ── 高位の人につき従う警護の供人。 6畳紙 ── 折り畳んで懐中にいれておき、歌などを書いたりする際に用いた紙。懐紙。 7中納言の君 ── 姫君の侍女。
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波線部adの文法的説明の組合せとして正しいものを、次の15のうちから一つ選べ。解答番号は1
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