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問題

  • 1

  • 2

中断

レベル2

STEP6

古文

  • 30
  • センター試験対策
  • 個別大試験対策
  • 記述

問題

次の文章は、まつかげちゅうごんものがたり』の一節である。松陰中納言は、彼を憎む者たちの謀略によって謀反の疑いをかぶせられるが、みかど主上)は松陰中納言と親しく、その話を信じられないでいた。以下は、松陰中納言が、偽の手紙によって誘い出され、以前から不興を買っていたれいけい殿でんの女御のもとに参上する場面である。これを読んで、後の問いに答えよ。

かかりしことはつゆ知らせたまはで、女御の召さるるに、このほどの御ねたみも、少し晴るけ給へるにやと、夕暮れのほどに渡らせ給ふ。もんの陣に、御車をとどめさせ給ひて、麗景殿へ入らせ給へるを、いかなることともわきまへさぶらはねども、止め(ア)まゐらすべきよし、おほごとにて(イ)候ふ」とて、使あまた御手をとりて、左衛門の陣に入れ(ウ)奉るに聞かせ(エ)給ひて、御気色いとしをれさせ給ひて、(注1)配所を定むべきのよし、仰せ言あり。

中将につゆ知らせ給ふまじきことなりければ、まがきの菊の夕映えより、月に染め増す紅葉の色に、御物思ひの深き、浅さを思ひなぞらへておはしけるに、御供の人々の立ちかへりて、かくこそ」とて、(注2)かい付くれば、あるかぎり集ひて泣き騒ぐ。我も、同じ罪に候はんなれば、まゐりて会ひ見奉らんことをこそ、急ぎぬべけれ。弟君たちの行方こそ、思ひおかれ候へ。親しきかぎりは、東国あづまに候ふなれば、(注3)御方よりあらざりけり」とて、そでを絞り給へば、侍従さへ、今朝よりでて帰らぬなり。幼き君たちを残し給ひて、など出で給はんとはせさせ給ふ」と、御袖をとらへんとし給へど、夜もこそ更くれ」とて、立ち出でさせ給ふ。したはせ給へる御声々に顧みさせ給へば、傾く月の影かすかに松のこずゑにうつろふを、

なれなれし宿の梢を今はとて月やあるじとすみかはるらん

殿上に候ひ給ひて、(注4)頭中将に罪は何ごとにや。我をもおはすらん所へいざなひ給へ」とのたまはすれば、御罪のあらんこととも思ひはべらねど、かう定めさせ給へるを、とかく計らひ奉らんも、軽々しき業と思ひ過ぐし侍る。明けなば島へ赴き給ひなん。対面もあらまほしかるべけれども、我だに心にまかせ候はず。我がかたへ入らせ給ひて、御文をまゐらせさせ給へ」と、誘ひ給ふ。思ふほどなる言の葉、なかなかに、

(注5)涙川うき瀬はありとうたかたの消えてぞすまんもとのみぎは

御文を見給ふに、いとどせきあへ給はず。今をかぎりと知らましかば、後の世かけて契り置きてんものを、かくばかり浅きえにしにあらば、何しになれそめけん、いとけなき君たちの行く末など、思ひつづけさせ給うて、御涙に沈ませ給へるに、御かへりことを急ぎ奉るに、御文をひきかへして、

明日知らぬ我こそあらめ涙川おなじうき瀬に沈まずもがな

都の御名残の、尽きさせ給ふまじきことなりければ、千夜を一夜になせりとも、明け行く空はうらめしからまし。

注) 1配所 ── 流刑地。 2かい付くれば ── 中将に)すがりつくので。 3御方 ── とうない 4頭中将 ── 左衛門の陣の責任者。 5涙川うき瀬はありと⋯⋯ ── うき」は憂き」と浮き」の掛詞。すまん」は澄まん」と住まん」の掛詞。水泡」は無実の罪を指し、冤えんざいが晴れてもとのように暮らせるようになってほしいということを詠んだ歌。

【人物関係図】
問一
5
二重傍線(ア)(エ)の敬語表現は、それぞれだれに対する敬意を表したものか。正しい組み合わせを次のうちから一つ選び、符号で答えよ。
  • (ア)麗景殿の女御(イ)主上(ウ)左衛門の陣(エ)検非違使
  • (ア)麗景殿の女御(イ)松陰中納言(ウ)松陰中納言(エ)主上
  • (ア)松陰中納言(イ)主上(ウ)左衛門の陣(エ)松陰中納言
  • (ア)松陰中納言(イ)松陰中納言(ウ)松陰中納言(エ)主上
  • (ア)松陰中納言(イ)松陰中納言(ウ)左衛門の陣(エ)松陰中納言
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